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アムルトインターナショナルが運営する北バハル・アルガザール州東アウィル郡マルアルコンの難民キャンプに赴任中のボランティア調整員、北村純一さんからの報告です。

現地報告レポート

第1回 2007年3月 南スーダン マルアルコンキャンプ ボランティア報告
第2回 2007年4月前半 職業訓練所建設用資材、機材到着
第3回 2007年4月後半 職業訓練スタート
第4回 2007年5月前半 職業訓練途中経過
第5回 2007年5月後半 職業訓練途中経過
第6回 2007年6月 職業訓練途中経過

第1回 2007年3月 南スーダン マルアルコンキャンプ ボランティア報告 

スーダンの北バハル・アルガザール州は南スーダン北西部、中央アフリカとの国境に近く、ニュースで耳にすることの多いダルフール地方に隣接している。アムルトインターナショナルがキャンプをかまえる同州東アウィル郡マルアルコンは乾季が後半に差し掛かったところだ。一面に広がる茶色の景色の中に、南スーダン最大部族であるディンカ特有の円錐形の藁葺屋根の家が点在している。日差しが真上から突き刺してきて、日中の気温は連日40度を超える。

上空から見たアウィル アムルトのマルアルコンキャンプ前

井戸で水を汲む女性たち
5つの郡からなるこのアウィル地域は南北内戦時の前線であり、上ナイル州西部や西バハル・アルガザール州ワーウ市から流入した国内避難民が生活しているとともに、スーダン北部やウガンダなどの隣国から戻ってくる帰還民もおり、彼らが山積みのトラックから荷物を降ろす姿を時おり目にする。

しかしながら出身地では仕事が見つからないことを理由に国内避難民の多く(アムルトの調べでは40%)が戻れずにいる。その一方でここアウィル地域では十分な社会サービスが提供されていないため教育を受けられず、商売を始めるための初期投資や技術の取得など収入を得るための手段が極めて限られている。また一夫多妻制により女性が世帯主の家族が大多数を占めるのだが、女性の教育は重要とは考えられておらず、半数以上の女子は小学校に登録すらしていない。女性に対する支援やエンパワーメントが大きな 課題となっている。


アムルトの職業訓練所プロジェクト
アムルトはここ東アウィル郡にて①教育、②農業・食糧確保、③水・衛生、④マイクロクレジットの4つの分野でプロジェクトを行っている。これら全てに共通するテーマが地元コミュニティーの能力構築(capacity building)と女性のエンパワーメントである。

このうち教育分野では職業訓練所(Vocational Training Center: VTC)を建設・運営し、帰還民を含めた地域住民が収入源の確保により生活を回復・改善できるよう支援している。今年このプロジェクトに資金提供しているのが日本の国際協力機構(JICA)だ。

このVTCでは小学校へ通うことのできない女子を対象として洋服の仕立てを、技術を持たず無職の男性には大工または石工技術を教える。一年間にわたるトレーニングを各コース25人ずつ、2009年までの2年間で計150人の育成を目指している。

洋服仕立てコースでは生徒に宿泊施設と世界食糧計画(WFP)の職業訓練の対価としての食糧援助(Food for Training)での協力もと1日3食を提供する。仕立ての技術だけでなく文字の読み書き、算数、家庭科学、そしてビジネスマネジメントについても教え、卒業後自立して事業経営できるようにする。2002年から実施されているこのプロジェクトでは当初仕立て技術のみを教えていたが、生徒の基礎教育の欠如という問題からこのようなカリキュラムがつくられた。大工と石工のコースでは生徒へ昼食が提供される。

卒業時にはそれぞれミシン、大工・石工道具、事業立ち上げのための予備部品と材料が与えられる。また生徒間で職業組合を形成し就職や市場についての情報交換を促すほか、マイクロクレジットを提供する。卒業3ヶ月後にカウンセリングを行い、必要ある場合には再講習を行う。


現在の状況
4月中旬の授業開始に向けて現在は生徒の募集・選定とアムルトの資金のもとで学校敷地内の整備を行っている。

マビルという場所にあるVTCはマルアルコンキャンプから車で20分程のところだ。ケニヤ人からなる教員はすでに集まりはじめ、ここに住み込みで働いている。教育分野の別プロジェクトである教師育成訓練所(Teacher Training Center: TTC)の女生徒たちが現在施設を利用していたり、敷地内にある井戸に近所の人たちが集まってきたりと、小さな村のようにいつもにぎわっている。

マビル敷地内 洋服仕立て用の教室と教員の一人

洋服仕立て用の教室には足踏み式ミシンが並んでいる。寮も1棟が出来上がっており、もう1棟が建設中で近々完成予定だ。これらの建設はケニヤ人の大工に地元の人々が加わって行われている。まだ広い土地にぽつぽつと建物がある程度だが、今後大工・石工コースの実技訓練の場所としてJICAの協力により教室と寮が建てられる予定だ。今ではケニヤ人スタッフの間から「JICA」という言葉が頻繁に聞かれ、授業の開始とともに生徒の間にも浸透していくのだろう。

アムルトでは生徒の選定においてパヤムと呼ばれる郡下の行政区の行政官、郡の教育担当官、そしてアムルトの教育担当官からなる選定委員会を設置し、地元コミュニティーのプロジェクトへの参加を確保している。洋服仕立てコースでは現在30人の生徒が集まっており、キリスト教の復活祭が終わるごろから敷地内にやってくる。

現在問題となっているのが大工コースで未だ十分な数の生徒が集まっていないことである。発展途上で帰還民の定住が直近の課題であるこの地域では建設業の需要は高い一方、職人の数は極めて少ない。にもかかわらず生徒が集まらない理由の一つと考えられるのが、NGO間のプロジェクトの重複である。実は東アウィル郡で活動する別のNGOが以前より大工の職業訓練所を開いていた。アムルトの教育担当官(スーダン人)の見解では、このNGOの過去のトレーニングの結果が良くなく、卒業生が仕事を得るのに苦労している。このためコミュニティー内にどのNGOのものかに関係なく大工のVTCそのものに対する不信感が芽生えてしまったのだという。理論を中心としたカリキュラムであったために技術の習得が上手くいかなかったのかもしれないとのこと。

プロジェクトのテーマである能力構築の点から、アムルトのプログラムは実技訓練に焦点を当て、生徒そしてコミュニティーに対する技術の移転を行っている。また前述のとおり卒業時に独立のための大工道具や資材を与えたり職業組合を通して相互扶助を促したりすることで、「教える」という行為そのものでなく生徒たちがトレーニングを通して生活を立て直し、改善できることを狙いとしている。対策としてアムルトでは教育担当官が各パヤムに対してプログラムの違いを説明し、積極的な参加を呼びかけている。

一方でアムルトが独自のプロジェクトを開始する今年、このNGOとの調整も課題となっている。プロジェクトをドナーに対して売り込むNGOの立場からすれば、効果がわかりやすく、かつ他のNGOにはないものを行いたい。スタッフの安全確保やロジスティックス面の要因で活動できる地域が限られている中、効果的なプロジェクトを行おうとするとどうしても同じ内容になりがちになってしまうのかもしれない。このNGOとは3月中旬から末にかけて調整のための話し合いが行われ、その結果アムルトの現在のプロジェクトの期限である2年間は計画通り行い、その後再び話し合いがもたれることとなった。


今後の予定
4月中旬から生徒が職業訓練所に集まり、いよいよ授業が始まる予定。


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