第3回 2007年4月後半 職業訓練スタート
4月も終わりに近づき時々大雨が降るようになり、これまで茶色だった景色に緑が目立ち始めた。雨の去った後には大きな水溜りが現れ、子供たちが裸で遊んでいる。
生徒の募集・選考を経て、4月第3週に職業訓練所(Vocational Training Center: VTC)の授業が始まった。
 |
| 洋服仕立てコースの授業 |
 |
課題に取り組む生徒 |
 |
大工・石工コースの授業 |
洋服仕立てコースでは16歳から20代前半の生徒が25人集まった。全員が小学校へ行ったことのない、もしくは途中で退学せざるをえなくなった者である。あどけないが、中には既に結婚して子供を持つ生徒もいる。カリキュラムは午前中に仕立ての理論と技術を学び、午後は英語、ディンカ語(現地語)、算数、そして涼しくなる夕方から体育となっている。
生徒に与えられた最初の課題は自分の制服を2着作ること。生地は現地で調達され、アムルトのシンボルカラーである青となっている。一つの工程が終るごとに教員に見せ、次の指示を仰ぐ。VTCにやってきた時からミシンの踏み方は学んでいたので皆使えるが、生地の切り方や縫い方がまだ雑でぎこちないために穴が開いていたり、糸がほつれていたりする。
授業を進める上で問題となっているのが言葉だ。生徒は英語をほとんど話せないのでケニヤ人の教員2人に対して昨年の卒業生がアシスタント兼通訳として2人付いている。また現地語の読み書きもできない生徒も多く、体で覚える実技はまだしも、ミシンの構造や生地、デザインについて学ぶ理論の授業では大きな障害とな
る。それでも生徒からは日に日に新しい英語が発せられ、同時進行で行われている語学の授業の効果がわかる。
大工コースの生徒不足は大工と石工のコースを統合し、代わりに洋服仕立てコースの生徒を50人まで増やすことで対応されることになった。自動車整備・運転コースの新設が検討されていたが、現時点で新しいコースをつくるコストを考えるとアムルトが豊富な経験を持つ分野を伸ばすほうがプロジェクトの効果が大きいということで今回は見合わされることとなった。
ただ石工コースでは25人近くが登録していたが実際に授業に集まったのはそれ以下であった。原因の一つにはコミュニティー内でプロジェクトについての誤解があったことが挙げられる。VTCを専門技術を学ぶ場所ではなく普通の学校だと勘違いして応募していたのだ。アムルトでは今後VTC宣伝の範囲を他郡にも広げて引き続き生徒を募るとともに来年度の生徒確保を目指す。
生徒は20歳前後。寮が提供される洋服仕立てコースとは違い、遠くの家から通わなければならない者もいることから授業に全員が揃うことは難しい。カリキュラムは週5日のうち3日が現場での実習となっている。建設現場の運営や、経営、設計についても教える予定だが、生徒のレベルを考え、まずは理論を教えて基礎を作ることにした。
理論の授業では服装や環境など仕事をする上での安全処置について学んでいる。まだ教科書が無いため生徒は黒板に書かれた用語と定義、道具の絵をノートに丸写しにする。洋服仕立てコースに比べ英語をある程度話せて計算もできる生徒が多いが、代わりに問題となっているのが生徒間の差である。英語をほとんど話せない生徒に対して生徒の一人がケニヤ人教員の説明したことを途中で訳しながら進める。しかしこれでは個人の活動範囲が広がる実技の授業では手に負えないことから洋服仕立てコースのようにアシスタントを雇うことを検討している。
もう一つ問題となっているのが道具の不足だ。道具の説明をする際に実際にそれが手元に無いため言葉での説明となるが、生徒には聞き慣れない英単語、見慣れない道具のため意味が伝わりにくい。例えば安全のためのヘルメットなど、ここでしっかり教えておかないと卒業後の仕事の進め方への影響も考えられる。今後教科書が届けば写真が役立つだろう。